2025.09.08あらたか
「カリー!」(乾杯)の掛け声に合わせてグラスを掲げると、目の前には炊き立てのジューシー(豚肉の炊き込みご飯)に、濃いたれがよくからんだ肉厚のラフテー。琉球民謡をバックに味わえば、そこはまるで沖縄。オリオンビールを積み上げたウェルカムボード(中身はスタッフ一同力を合わせて消費してきました笑)も皆さまを出迎えます。
5回目を迎えた「hanare宝塚(小規模多機能型居宅介護)」の夏祭りは、「沖縄」をテーマに非日常を味わっていただく「沖縄フェス」です。
沖縄料理に舌鼓をうったあとは、三線の生演奏。「めんそーれ!」の掛け声に合わせて登場したのは、ボランティアグループ「てぃんがーら」の皆さまです。ハイサイおじさんの陽気なメロディーが流れると、少し緊張していたご利用者さまにも笑顔がこぼれます。
開設当初から取り組んでいる「涙そうそう」のリズム体操も、今回はてぃんがーらさんの生演奏です。皆さま真剣に体を動かしておられました。「我は海の子」など馴染みの歌も三線の伴奏で歌うと雰囲気もまた格別です。「おじー自慢のオリオンビール」という曲では、オリオンビール(空き缶ですが!)を片手に何度も乾杯して盛り上がりました。
沖縄には「幸せをかきまぜる」という意味を持つ伝統的な踊りがあります。「カチャーシー」というこの踊りを、スタッフもご利用者のみなさまも2カ月間練習してきました。「練習した甲斐があったね」と笑うご利用者さまのお言葉どおり、今では自然と体が動くようになりました。三線のリズムに合わせて踊るとどの方にも笑顔があふれ、スタッフと手を取りあって楽しむ姿も見られました。
最後には、ご利用者さまからてぃんがーらの皆さまへ感謝状を贈呈。大役を引き受けてくださったTさまに「ありがとう」を意味するうちなーぐち(沖縄言葉)を耳打ちすると、「できるかしら」と仰いながらも、しっかりと「にふぇーでーびる(ありがとう)」と言葉にしてくださいました。介護が必要になると遠くへの外出が難しくなります。そんな皆さまに、食・踊り・音楽・言葉を通して、憧れの沖縄の文化を少しでも感じていただけたなら幸いです。
今回の沖縄フェスには、3階の「metoo宝塚(グループホーム)」のご利用者さまにもお越しいただきました。そのお一人であるSさまは、結婚するまで沖縄で暮らしておられたそうです。はじめは手拍子で楽しんでおられたSさまも、いつの間にか本場のなめらかなカチャーシーを披露。最後はてぃんがーらの演奏者の方に「またんめんそーれ(また来てね)」と声をかけられていました。Sさまの心に浮かんだのは生まれ育った沖縄の海だったでしょうか。それとも、そのカチャーシーを教えてくれた大切な人たちだったのでしょうか。
戦後80年――。笑い声と三線の音色がひびくフロアには、カチャーシーでかきまぜられた幸せが満ちているように感じられました。こんな幸せが、これから先も続きますように。