2025.08.19GOALZ
4年にわたり取り組んできた『終活』の企画が、このたび一区切りを迎えました。
振り返れば、最初の訪問から今日までの一歩一歩が大切な歩みとなりました。
【実施日】
第1回:2021年12月15日
第2回:2024年6月17日
第3回:2024年11月20日
第4回:2025年1月29日
MさまがARC舞多聞(通所介護)を利用されるようになったのは、転倒による右肩骨折がきっかけでした。「要支援」と認定され、日常の動作にも支えが必要となった時期のことです。
もともと長年暮らしていたのは伊丹市。
実母の看病のために神戸市と伊丹市を行き来し、やがて神戸での生活が中心になりました。それでも伊丹の家は手放さず、数十年の間、静かに空き家として時を重ねてきました。距離と年齢による体力の衰えが、足を遠ざけていたのです。
ARCを利用するうちに少しずつ心を開いてくださり、この家のことを話してくれるようになりました。「何とかしてあげられないだろうか」――そう考え、上司のYさんに相談。「じゃあ一緒に行こう」と決まり、第1回目の訪問が始まりました。
●第1回:はじまり
最初の目標は「自宅を売却すること」。
現地に足を踏み入れると、そこには亡き夫との思い出やお気に入りの食器がそのまま残っていました。手に取るたびに「持って帰りたい」という想いが芽生え、運べる分を抱えて帰路につきました。
●コロナ禍での足止め
しかし、その後はコロナ禍。
「動けるうちにあの家を片付けたい」と繰り返し口にしながらも、次の訪問は叶わない日々が続きました。
●第2回:再び、伊丹へ
ようやく感染状況が落ち着き、再訪問が実現。
必要・不要の分別や持ち帰り品の搬出をお手伝いしました。階段を昇る足取りが前回より重くなっている姿に、この企画を急がなければと強く感じました。
●目標の変更
ところが2回目の後、売却が難しい事情が判明。
ご説明のうえ納得いただき、目標は「売却はせず、中を整えた状態にする」へ。家財や家電が多く残るため、専門業者に依頼することになり、業者探しから依頼までを伴走しました。
●第4回(最終回):空っぽの家
最終回は、片付けを終えた家の確認。
玄関を開けると、かつての生活の匂いが消え、澄んだ空気が流れていました。「わぁ…きれい…!」と、驚きと喜びが混じった声がこぼれます。各部屋を一緒に回りながら、お別れの時間を噛みしめる姿が印象的でした。
撤去後のフローリングに残る、小さなシール――おそらく息子さんたちが貼ったもの。そこには、時間の流れと家族の記憶が、静かに息づいていました。
「息子には迷惑かけられん」その言葉を胸に、自分の足で動けるうちに一つひとつ決断を重ねるMさま。その背中に寄り添えたこと、この企画に関われたことを、心から誇りに思います。