2024.08.05あらたか

【hanare伊丹】ウクレレが奏でた夏祭り

待ちに待った夏祭りの日――。ある利用者さまにとっては、数年ぶりの発表会となる特別な日でもありました。

7月の終わり、梅雨が明けたタイミングで、hanare伊丹(小規模多機能型居宅介護)では恒例の夏祭りが開催されました。ご利用者さまが主導して作ったやぐらを囲んでの盆踊り。7月は「盆踊り強化月間」として毎日のように繰り返し練習を重ね、「掘って、掘って、また掘って」と炭坑節を踊る姿は、まさにその成果が現れていました。
やぐらの周りには、射的、ヨーヨー釣り、金魚すくい、千本くじなどの屋台も並び、普段は体調が優れずにお部屋で過ごすことが多い方々も目を輝かせておもちゃの銃を構え、狙い撃ち! 中には60匹以上の金魚をすくった強者もいたほどです(もちろんおもちゃです!)。

この日一番の盛り上がりを見せたのは、参加者全員での合唱でした。演奏を担当したのは、Kさまです。
Kさまの以前の趣味はウクレレで、仲間と共に演奏に参加することが楽しみでした。しかし、昨年の脳梗塞を発症以来、ウクレレに触れることはなくなっていました。奥さまからその話を聞いたスタッフは、ウクレレを奏でる楽しさや喜びを再び感じて欲しいと思い、夏祭りでの演奏を提案したところ、Kさまは二つ返事で受け入れてくれました。けれども、一筋縄ではいかないのが、この病気の後遺症です。
手指には若干の麻痺が残っており、何とか弦を押さえることはできましたが、集中力が続かず練習がなかなか進みません。音階も以前とは少し違って聴こえるのか、何度合わせてもチューニングが気になるようで曲の演奏に辿りつけず、以前のような演奏ができないことにストレスを感じている様子も見受けられました。これは時期尚早だっただろうか――。もっと時間をかけて練習し、発表の場を先にしたほうが良かったのかもしれないと、正直私たちも不安に感じることがありました。

そんなある日、Kさまと一緒にウクレレを弾くスタッフが現れました。なんと、Kさまに教えてもらおうとウクレレを購入したのだと言います。二人が奏でるウクレレの音色に自然とまわりのご利用者さまが歌い始め、Kさまも手を止めることなく奏で続けます。これまでストレスを抱えておられたであろうことが嘘のような表情です。その日、Kさまは改めて「夏祭り、演奏するよ」と言ってくださったのでした。

そして迎えた夏祭り当日。成功を信じる気持ちと、Kさまが楽しんで演奏できるかどうかという不安が入り混じる中、Kさまの演奏は見事に成功。演奏が終わると、温かい拍手が何度も響き渡りました。音楽や絵、スポーツは人の生きるモチベーションに繋がっているんだと実感した瞬間でした。

夏祭りも終盤に差しかかり、演奏の記念にとカメラを向けたスタッフに、ぴたりと寄り添って優しい笑みを浮かべるKさまご夫婦。その姿は、私たちにとって最高のプレゼントとなりました。